フコイダンという分子量の大きな成分を低分子加工し、腸管から吸収されやすくしたのが低分子化フコイダンです。
2002年より九州大学において基礎研究が開始され、現在は医療機関による臨床研究や東京医科大学の落谷孝広教授による研究も行われております。
2023年10月に低分子化フコイダンの研究者の方々や臨床研究に携わっている医師が集まり、各々の研究や症例報告会がございましたのでご報告させていただきます。
九州大学-最新研究報告
低分子化フコイダンのこれまでに確認されている作用
今回は新しく低分子化フコイダンの臨床研究に参加された先生方のために、振り返りとして低分子化フコイダンのこれまでに確認されている作用についての説明がありました。
《アポトーシス誘導作用》
がん細胞及び正常細胞に低分子化フコイダンを処理し、増殖に及ぼす効果の実験を行ったところ、正常細胞は著効がなかったが、がん細胞に対しては低分子化フコイダンの濃度が高くなるにつれ、大きく細胞の生存率が低下しました。
さらに調べたところ、低分子化フコイダンにはがん細胞だけをアポトーシスに導く作用があることが解りました。
《抗がん剤との併用効果》
がん治療において多くのがんで使われる白金製剤のシスプラチンと低分子化フコイダンを併用した実験の結果、がん細胞においてはシスプラチンの濃度が高まるにつれ細胞死が増強し、また低分子化フコイダンの処理濃度が高まるにつれシスプラチン単独よりもがん細胞の細胞死が大幅に増強されました。
この実験から、低分子化フコイダンは抗がん剤の邪魔をせずに、むしろ併用することで抗がん剤と低分子化フコイダン両方でがん細胞を攻撃していくことが示されました。
一方、正常細胞においてはシスプラチンの濃度が高まるにつれ細胞死が大きく増強するものの、シスプラチンを処理した時に低分子化フコイダンを併用した場合、低分子化フコイダンの濃度が高まるにつれて正常細胞の細胞死が抑制されました。
この実験から、正常細胞に対しては抗がん剤の攻撃から低分子化フコイダンが守ってくれる保護作用があると考えられます。
抗がん剤と低分子化フコイダンを併用することで、がん細胞へのがん抑制効果の増強と正常細胞への保護効果の二点があると考えられております。
《がん血管新生、浸潤、転移の抑制作用》
研究の中でがん細胞に低分子化フコイダンを処理すると、がん細胞の血管新生と、さらに浸潤を抑える作用が認められました。血管新生と浸潤を抑えることができれば、それは転移を抑えるということにも繋がってきます。
《免疫チェックポイント関連遺伝子の発現変化誘導》
がん細胞はPD-L1を細胞表面に発現して細胞傷害性T細胞に付いているブレーキスイッチであるPD-1とくっつき、自身が排除されるのを防ごうとします。
低分子化フコイダン処理によるがん細胞のPD-L1の発現量変化を調べたところ、低分子化フコイダンはPD-L1の発現を抑制することが解っております。
がん幹細胞に対する低分子化フコイダンの効果
悪性腫瘍は親となるようながん幹細胞と子のがん細胞に分かれており、がん幹細胞は腫瘍形成能・自己複製能・分化細胞を生み出す・無制限に分裂可能といった特徴を持っています。
三大療法(薬物療法・放射線・手術)の効果が出やすいのは一般的ながん細胞で、がん幹細胞には効きにくいといわれています。
薬物療法が奏功して画像上から消失したとしても、がん幹細胞が残っている場合は転移や再発をするといわれています。
がん細胞をいくら叩いても、がん幹細胞が残っていれば結局再発してしまいます。
反対に考えると、がん幹細胞を叩くことができれば完治できるということです。
基礎研究の中で、抗がん剤を処理した時と低分子化フコイダンを処理した時にがん幹細胞マーカーであるCD44※1とCD133※2にどのような変化がでるかの検証が行われました。
その結果、抗がん剤を処理した時は抗がん剤の濃度を高くすると通常のがん細胞に対しての効果は強いが、がん幹細胞は残ってしまうという結果になりました。
次に低分子化フコイダンを処理した時は、低分子化フコイダンの濃度を高くすると通常のがん細胞も細胞死に導きますが、がん幹細胞も顕著に減少しました。
この結果から、抗がん剤は普通のがん細胞に対しての効果はあるが、がん幹細胞が残ってしまうため再発しやすい。しかし、低分子化フコイダン処理の場合はがん幹細胞にも効果があるため、腫瘍が小さくなり、さらにがん幹細胞の比率が低くなるために再発しにくいのではないかと考えられます。
以上までは、2021年にすでに発表されている内容です。
今回、新たにさまざまな作用の違う抗がん剤(白金製剤・代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ剤・微小管脱重合阻害薬・有糸分裂阻害薬など)を用いて「抗がん剤と低分子化フコイダンを併用した時のがん幹細胞の体積の変化」、そして「低分子化フコイダン併用時に抗がん剤の濃度を変化させるとどうなるのか」の検証についての発表がありました。
※1 CD44:抗がん剤や放射線治療に対する抵抗性に関連
※2 CD133:腫瘍細胞の生存ならびに増殖を促進する役割を担う可能性が示されている
《抗がん剤と低分子化フコイダン併用時のがん幹細胞の体積の変化》
がん幹細胞の性質をもったスフェロイド※をつくり、(1)何もしていない、(2)抗がん剤処理のみ、(3)低分子化フコイダン処理のみ、(4)抗がん剤と低分子化フコイダンを併用の4パターンの比較検証を行ったところ、(1)から(4)に数字が大きくなるにつれてがん幹細胞の性質をもったスフェロイドの体積の減少が確認されました。
このことから、抗がん剤や低分子化フコイダン単体処理でもがん幹細胞に対して効果はあるが、併用することでの相乗効果があることが示されました。
※スフェロイド:細胞同士が凝集して塊になったもののこと
《低分子化フコイダン併用時に抗がん剤の濃度を変化させるとどうなるのか》
(1)低分子化フコイダン・抗がん剤ともに添加なし、(2)低分子化フコイダンを添加せずに抗がん剤の濃度を0.5(㎍/ml)、(3)~(6)は低分子化フコイダンの濃度を0.4(mg/ml)で統一し、抗がん剤の濃度を(3)が0(添加なし)、(4)が0.5(㎍/ml)、(5)が0.2(㎍/ml)、(6)が0.05(㎍/ml)と変化させ、(1)~(6)の比較検証が行われました。
▼結果▼
(1)スフェロイド※の体積に変化はもちろんありません。
(2)スフェロイドの体積が(1)と比較して約1/2まで減少しました。
(3)スフェロイドの体積が(1)と比較して約3/10まで減少しました。
(4)スフェロイドの体積が(1)と比較して約1/10まで減少しました。
(5)スフェロイドの体積が(4)の抗がん剤濃度が最大の0.5(㎍/ml)の時と比較して若干大きくなりました。
(6)スフェロイドの体積が(1)と比較して約1/5まで減少しました。
抗がん剤のみ添加、低分子化フコイダンのみ添加したいずれの場合でも、スフェロイドの体積は半分ほどに減少し、低分子化フコイダンと抗がん剤を併用するとさらにスフェロイドの体積低下がみられました。
(5)(6)のように抗がん剤の濃度が低くなるとスフェロイドの体積の減少率は下がってしまいます。
しかし、(2)の抗がん剤単独で濃度0.5(㎍/ml)と(6)の低分子化フコイダン0.4(mg/ml)添加・抗がん剤0.05(㎍/ml)を比較すると、抗がん剤と低分子化フコイダンを併用した時の方がスフェロイドの体積は低いことがわかります。
これらのことから、抗がん剤の濃度に関係なく低分子化フコイダンを併用した方がより効果が出るということが解りました。
治療中、体調や副作用の現れ方をみながら抗がん剤の投与量を減量するということもあります。抗がん剤の投与量が減ったら不安になってしまう方も多いですが、低分子化フコイダンを併用することで、より効果的な薬物療法に繋がるという前向きな結果になったのではないでしょうか。
※スフェロイド:細胞同士が凝集して塊になったもののこと
その他の研究発表
その他、東京医科大学の落谷孝広教授によるリモート講演や、口腔分野で基礎研究をされている日本歯科大学の岡俊哉准教による講演もありました。
特に東京医科大学の研究では、治療を受けられているがん患者さんの多くが悩まれる肝機能に対しても、低分子化フコイダンは改善するという前向きなデータも出てきているようです。
落谷教授の講演内容については、他のエクソソーム研究との兼ね合いもありご報告はできませんが、低分子化フコイダンをより安心して多くの方に活用していただける前向きなデータが出てきていると感じました。
現在、低分子化フコイダンに賛同する医師は100名を越えています。
臨床研究されている先生が「良くないものであったら、ここまで続くこともなく賛同してくれる方々が増えることもありません。低分子化フコイダンを用いて西洋医学だけでは説明のつかない数々の不思議な経験を私たちはしてきました。」とおっしゃっていました。
まだ保険収載されておらず高価なものではありますが、この難治性疾患であるがんという病気を乗り越えるためにも、ぜひ活用していただきたいと私たちは心から願っております。