胚細胞腫瘍はまれながんのひとつで、小児がんの3~4パーセントを占めます。このがんは、5歳以下と15~19歳頃に多いことが知られています。原因はよくわかっていませんが、中枢神経(脳と脊髄)や生殖器、背骨などに奇形をもつ子どもの発症率がやや高いという報告があります。一部の胚細胞腫瘍では染色体の異常も指摘されています。胚細胞腫瘍には、奇形腫・胚細胞腫・卵黄嚢腫・絨毛がん・胎児性がんがあります。これらのうち胚細胞腫瘍以外では、ほとんどの患者の血液中からAFP(アルファ胎児性たんぱく質)が見つかります。
また、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)や、LDH(乳酸脱水素酵素)の濃度が上昇することも少なくありません。胚細胞腫瘍は、肺・肝臓・リンパ節・中枢神経に転移しやすいことが知られています。まれに骨や骨髄などに転移することもあります。
しかし、胚細胞腫瘍は抗がん剤の治療効果が高く、肺や肝臓に転移しても化学療法によって助かる例は少なくありません。化学療法が始まる以前は、生殖腺外の胚細胞腫瘍(奇形腫以外)の2年生存率はわずかに15パーセント程度でした。しかし現在では、3年無病生存率(再発なしの生存率)が70~80パーセントまで上がっています。
胚細胞腫瘍の治療方法
奇形腫(テラトーマ)
奇形腫の治療の基本は、腫瘍を切除することです。成熟奇形腫は手術だけで治療を終了します。未熟奇形腫は手術に加えて化学治療を施すことがあります。しかし現在では、再発時以外には化学治療は行うべきではないとされています。
胚細胞腫
他の胚細胞腫瘍とは異なり、放射線治療の効果が高いがんです。しかし最近では、化学療法と手術を組み合わせる例が増えています。
絨毛がん
手術と化学療法を組み合わせますが、化学療法だけでも治癒します。
《絨毛がんで使われる抗がん剤》
その他の胚細胞腫瘍
卵黄嚢腫(内胚葉洞腫瘍)は化学療法と手術を行うのが通常です。 最近、胚細胞腫瘍に対しては、高用量の抗がん剤を使用すると治療効果が高いという研究結果がでました。
《使われる抗がん剤》
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