W5−6 大腸癌患者に発生するポリープは発癌性が強いか:p53の免疫染色から
近畿大学第一外科
吉田年宏、綿谷正弘、家田真太郎、犬房春彦、久保隆一、肥田仁一、喜多岡雅典、中村正人、
藤本喜代成、進藤勝久、安富正幸
< 目的 >
大腸癌は、腺腫の併存や、手術後に腺腫が高率に発見される。また大腸癌患者では同時性あるいは異時性大腸癌発生頻度も高い。一方、大腸癌の組織発生には、adenoma carcinoma sequence が重要視されているが、大腸癌に併存するポリープの遺伝子学的解析はまだおこなわれていない。
近年Vogelsteinは、大腸癌のadenoma carcinoma sequenceモデルに対応させ遺伝子変化の蓄積を示した。このVogelgramによると腺腫から大腸癌へのconversionの過程でp53遺伝子変異は大きな役割をはたしているはずである。今回、我々は大腸癌切除後にポリペクトミーがなされた腺腫を対象にp53遺伝子蛋白の免疫染色から腺腫の2次性発癌の可能性について検討した。
< 対象、方法 >
1991年から1992年に、同時性大腸癌2例および異時性大腸癌1例を含む27例の大腸切除例(StageI:8、Stagell:7、StageⅢ:14、StageⅣ:0、StageV:1例)をFollowup し、内視鏡下に27例の腺腫を摘除した。p53 遺伝子蛋白発現は、パラフィン包埋切片をもちいた抗p53モノクローナル抗体(PAb1801)による免疫染色より検討した。
< 結果 >
異時性、同時性を含む30例の原発腫瘍(27例由来)のうちp53染色陽性は30%の腫瘍に認められた。また腺腫ではp53陽性率は41%(11/27)であった。腺腫の異型度別に検討すると、mild dysplasiでは19例中6例(32%)が、moderately dysplasiaでは8例中5例(63%)がp53染色陽性であった。原発腫瘍とsurveillance中にポリペクトミーされた腺腫でのp53染色性を検討すると、原発巣でp53染色陽性の8例中4例で摘除された腺腫がp53染色陽性性を示した。この4例のうち2例はmild dysplasiであった。異時性腫瘍例では、その原発癌病変、2次癌病変、mild dysplasiの腺腫においてもp53染色陽性であった。
一方、原発巣でp53染色陰性であった19例のうち、7例の腺腫ではp53染色陽性が認められた。
これら7例のうち4例はmild dysplasiaであった。以上、大腸癌切除後に発見される腺腫はp53染色陽性率が高いことから、mild displasiaであってもmahgnant potentialが高いことが示唆される。