抗がん剤に伴う副作用で味覚の変化や食欲不振は、抗がん剤治療を受けた30%前後の人が何らかの変化を経験されています。治療の効果に直接影響するものではないので見過ごされやすい副作用ですが、食欲不振や味覚の変化が続くと栄養状態が悪くなり、治療の妨げになることもあります。
抗がん剤治療を受けている人は健康時よりも多くのタンパク質やエネルギーの栄養摂取が必要になります。
対策 | 味覚障害や食欲不振そのものを予防することは困難ですが、抗がん剤による口内炎や口の中の感染症を悪化させないようにすることで味覚障害や食欲不振を軽くすることができます。日常的な口腔ケアをしっかりと行いましょう。 |
味覚障害の予防
- みらい細胞の新陳代謝を促進する亜鉛、鉄、ビタミンB12などを多く含む食品を摂りましょう。(例:緑茶、貝類、煮干、ゴマ、ナッツ類、シイタケ)
- うがいをして口の中の乾燥を防ぎ、潤った状態にしておくことで味覚障害の予防に繋がります。
- 食事の前にレモン水でうがいすることで唾液の分泌が促され、味覚の低下を予防したり味覚の回復を促すことができます。
- 唾液の分泌が少なく、舌が乾燥した状態になると味覚がわかりにくくなります。舌もブラッシングできれいして健康な状態を保ちましょう。
味覚障害に対する食事の工夫
味覚異常を起こしているときは、においにも敏感になります。温かい食事はにおいが強くなるため、少し冷ましてから食べましょう。
1) 塩味や醤油を苦く感じる、金属味を感じる場合
- 食前にレモンやフルーツで味覚を刺激する。
- 塩味を控えめにする。
- カツオや昆布などの出汁を濃くする。
- レモンやゴマなどの風味や香りを利用してみる。
- 酢の物を取り入れる。
- カップ麺などは塩分を感じやすいので避ける。
2) 甘みを強く感じる場合
- 塩味、醤油味、味噌味を濃くしてみる。
- 砂糖、みりんなどの甘みを控える。
- 汁物を試してみる。
- 酸味のあるジュースや酢、スパイスを利用する。
3) 味を感じにくい場合
- 濃い目の味付けにしてみる。
- 果物、酢の物、汁物を多く取り入れる。
- 食事の温度は人肌程度にする。
4) 食べ物を苦く感じる場合
- あめやキャラメルなどで口直しをする。
- 出汁を利かせた汁物をとる。
- 卵豆腐や茶碗蒸しを試してみる。
- 薬味や香辛料を取り入れてみる。
食欲不振に対する食事の工夫
- 食欲不振のときはタンパク質が不足しがちです。手軽に食べられるタンパク質食品を上手に利用しましょう。(例:豆腐、納豆、チーズ、ヨーグルト、牛乳や市販品の温泉卵、卵豆腐、茶碗蒸しなど)
- いつでもすぐに食べられるような、軽食を準備しておきましょう。すんなりと食べられるタイミングを逃さないようにしましょう。
- 一度に食べる量を減らして、回数を増やしましょう。
- 食欲がないときは、大きな器に少量盛るより小さな器を使うようにしましょう。
- 就寝前に軽食をとるようにしましょう。
- 朝、起き抜けに水や牛乳、お茶など飲み物を取ってみましょう。胃が目覚めると同時に食欲が沸いてくることもあります。
治療中の副作用で思うように栄養が摂れない場合もあります。できるだけたくさんの方法を試し、効率的に栄養を摂ることのできる最善の方法を見つけましょう。治療の継続や免疫力をつけるためにも十分な栄養は必要です。エネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルも不足しないようにバランスよく摂りましょう。無理をせずに体調に合わせて食べれれるものから食べるようにすることが大切です。