白血病は大きく「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」に分けられます。前者は白血球のうちの顆粒(骨髄球)に分化・成熟する傾向のある芽球が、がん化したものです。後者は、白血球のうちのリンパ球に分化する傾向のある芽球が、がん化したものをさします。さらにその進行速度により「慢性」と「急性」に分かれます。そこでこれらの正式な名称は、例えば「慢性骨髄性白血病」あるいは「急性リンパ性白血病」というようになります。
成人では、全ての白血病の発症率のうち約80%が骨髄性、約20%がリンパ性です。また、慢性白血病が20パーセント、急性白血病が80%です。
急性骨髄性白血病
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄でつくられる「顆粒球」の芽腫が増殖します。日本では白血球全体の約55~65%を占め、中高年以降に多く発生します。また厳密には、どのタイプの細胞が、がん化しているかによってM0~M7までの8つの病型に分類されます。
急性リンパ性白血病
リンパ球は白血球の一種です。リンパ管系や血管系の中で、外部から進入した病原体をつかまえて分解し、侵入者が自己か非自己かを免疫反応によって見分けるなどの働きをします。リンパ球のもととなる細胞は、他の白血球と同様、まず骨髄の中で肝細胞から分化して芽球細胞になります。そして、胸腺や末梢のリンパ組織で成熟した後、リンパ管系に移り、リンパ節(特に頸部・脇の下・足の付け根のリンパ節)を構成する細胞となります。
急性リンパ性白血病(ALL)は、このリンパ球の芽球が、がん化して骨髄や血液の中にあふれる病気です。急性骨髄性白血病と異なり、幼児期(0歳~7歳ごろ)の発生が特に多く、それ以降の発症率は急速に低下します。
慢性骨髄性白血病
急性骨髄性白血病は、芽球細胞ががん化して未熟なまま増殖しますが、慢性骨髄性白血病(CML)では成熟した白血病(顆粒球)、及び血小板が異常に増殖します。慢性骨髄性白血病でがん化した白血球は、見かけは正常でも免疫を維持する働きが大幅に低下しています。そして、発生からの数年の移行期を経て、必ず急性に転化します。これを「急性転化」といいます。
つまり、それまで一見おとなしかった芽球細胞が、その悪性度を高めて急速に増加し始め、急性に変わるのです。白血病の重要な特徴で、発生のメカニズムにも深くかかわっているのが、細胞の核の中にある「染色体」の変異です。この変異は後天的に、つまりその人が生まれた後でおこります。
ということは、慢性骨髄性白血病は遺伝性ではないということになります。わが国の慢性骨髄性白血病は成人の20%前後で、この比較は欧米と比べて低くなっています。この病気は年齢とかかわらず発生しますが、とりわけ中年以降に多くなります。アメリカの統計では、50歳代までの発症率10万人に1人以下、64歳では3人、69歳で5人、74歳で7人と年齢とともに高くなります。しかし慢性骨髄性白血病は幼児も発生し、幼児の白血病の約4%を占めています。 慢性リンパ性白血病(CLL)では、芽球ではなく成熟したリンパ球ががん化します。
そして、がん化したリンパ球が骨髄やリンパ節、脾臓などでゆるやかに増殖し、その結果血液中のリンパ球が異常に増えます。慢性リンパ性白血病はどの種類のリンパ球ががん化したかによって、数種類に分類されます。 ちなみにリンパ球は次の3種類に分けられます。
これらのリンパ球のうち、B細胞が増殖する「B細胞性慢性リンパ性白血病」が、慢性リンパ性白血病の90%近くを占めます。 一方、T細胞性慢性リンパ性白血病は5~10%です。また、B細胞やT細胞に毛が生えたような外観を持つ「毛様細胞(ヘアリー細胞)」が現れる特殊な白血病もあります。これは「ヘアリー細胞白血病」と呼ばれ、慢性リンパ性白血病全体の約2%を占めます。慢性リンパ性白血病の発症率は、10万人あたり年間1~3人です。平均発症年齢は65歳で、50歳以上の発症が全体の90%を占めます。
白血病の標準治療
化学療法
白血病は他の多くのがんと異なり、病巣を外科的に取り除くことができません。そのため、化学療法(抗がん剤による治療)が中心となります。しかし、抗がん剤治療には吐き気・嘔吐・脱毛など様々な副作用や正常な骨髄細胞を殺してしまうなどの大きなリスクが伴います。西洋医学を柱として、代替医療を取り入れる選択肢もあります。
《白血病で使われる抗がん剤》
- シクロホスファミド
- アスパラギナーゼ
- イマチニブ
治療後の傾向
白血病がこれらの治療によって完全寛解に達しても、それはがんが発症する前の状態に戻っただけで、がんの根本原因が取り除かれていないことがあります。また完全寛解と診断されても、実際には体内に1億個以上のがん細胞がまだ残っているといわれ、危険因子がなくならない限り、再発の可能性があります。再発後は一般に化学療法だけで治癒することは難しいため、可能なら造血幹細胞移植を検討することになります。しかし、造血幹細胞移植を行なっても必ず治癒するとは限りません。
※完全幹解とは病気の症状が改善したり治癒したことを意味する言葉ですが、とりわけ白血病についてはしばしば用いられます。また、病気が完治したという意味ではありません。
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