軟部肉腫のうち、悪性でかつ発症率の高いものは以下のとおりです。
悪性線維性組織球腫
悪性の軟部肉腫の中では最も発症率が高く、全体の約4分の1がこの型です。上肢(腕)と下肢(脚)の線維組織に発生するこの悪性腫瘍は中高年に多く、とくに60歳代以降では悪性の軟部肉腫の大半を占めます。これは筋肉組織の方向にそって浸潤する傾向が強く、そのため手術では十分に広い範囲を切除しなければなりません。しかし、治療が成功すれば10年生存率は70パーセントに達します。
脂肪肉腫
日本では2番目に多い軟部肉腫です。この腫瘍は上肢と下肢、それに降服膜(腹膜の背中側と背骨との間)の脂肪組織に生じます。これはさらに4種類(高分化型脂肪肉腫・粘液型脂肪肉腫・円形細胞型脂肪肉腫・多形細胞型肉腫)に分けられます。このうち円形細胞型と多形細胞型以外は基本的には悪性度が低く、脂肪肉腫全体では10年生存率は90パーセントに達します。
横紋筋肉腫
筋肉組織の並び方によって大きく平滑筋と横紋筋の2種類に分けられます。(厳密にはこの他、心臓の筋肉、すなわち心筋があります。)ちなみに、平滑筋というのは、消火器や泌尿器、生殖器、それに血管の壁などをつくっている不随意筋(体が自動的にコントロールしている筋肉)です。また、横紋筋8骨格筋は、骨に付着して体を動かす役割を持っている筋肉です。横紋筋肉腫は、このうちの横紋筋に生じる腫瘍です。これはさらに3種類(胎児型横紋筋肉腫・胞巣型横紋筋肉腫・多形型横紋筋肉腫)に分けられます。
このうち胎児型は、乳幼児の頭部や頸部の筋肉にとりわけ多く発生します。分化方が低く転移しやすい腫瘍ですが、抗がん剤や放射線に対して敏感なため、リンパ節への転移がなければ、治療後の経過は良好です。胞巣型はとくに10歳代が発症しやすく、全体の横紋筋のどの部位にも生じます。5年生存率は10パーセントと非常に低くなっています。多形型は成人の四肢の筋肉に発生する腫瘍ですが症例は極めて少数です。
平滑筋肉腫
成人(まれに子供)の体幹部、つまり胴体部の平滑筋や後腹膜、腸間膜、手足の血管に発生する悪性腫瘍です。発症率は、様々な軟部肉腫の中では4番目に高く、全体の約8パーセントを占めます。静脈の血管壁に発生した場合、しばしば隣の動脈の壁をとりまくように成長します。肉腫細胞の分化度が低いものほど悪性です。
滑膜肉腫
上肢または下肢、それに体幹部の関節の近くに生じることが多い悪性腫瘍ですが、関節そのものに生じることはありません。しばしば病巣に石炭化がみられます。悪性度は高いものの、治療後の10年生存率は70パーセントに達します。神経肉腫多くは上肢と下肢、一部は体幹部の神経組織(上腕神経や坐骨神経、仙骨神経など)に発生する悪性の腫瘍です。神経にそって放散痛や知覚異常、筋力低下などが生じることもあります。
わが国では20~50歳にかけて好発し、男女の発症率の差はほとんどありません。この肉腫は、それだけで発症する場合と、レックリングハウゼン病と呼ばれる疾患が悪性化して発症する場合があります。レックリングハウゼン病というのは、皮膚に多数のいぼ状の腫瘍と色素班(カフェオレ班)が発生する病変で、他にも脊椎側湾症などの骨病変、眼病変など様々な異常を引き起こすことのある遺伝性疾患です。わが国には数万人の患者がいるとみられています。
骨外性軟骨肉腫
軟部組織に発生する軟骨を形成する肉腫です。これには、通常型、間葉性軟骨肉腫、粘液型軟骨肉腫などの型があります。間葉性では病巣の石炭化を認めますが、粘液型では石炭化はみられません。化学療法や放射線治療があまり効かないため、切除が主な治療法となります。
血管肉腫・血管外皮腫
上肢、下肢、頭頸部の血管及び血管外皮に発生します。血管肉腫は全て悪性ですが、血管外皮腫は分化の度合いによって悪性度が変わります。皮膚血管肉腫は皮膚の下の血管に多発性に生じます。軟部肉腫としてはこの他にも、悪性シュワン腫、明細胞肉腫、悪性中皮腫、悪性神経上皮腫、胞巣状軟部肉腫などがあります。いずれも全体的な発症者数は年間数人とめずらしい腫瘍です。
軟部肉腫の標準治療
外科治療
軟部肉腫に対しては、病巣を外科的に切除することが治療の基本となります。
抗がん剤治療
化学療法とは、抗がん剤を投与してがんを殺す治療法です。
精巣がんは抗がん剤の効果が最も高いので、ほとんどの治療に抗がん剤治療を行ないますが、抗がん剤治療には吐き気・嘔吐・脱毛など様々な副作用が伴いますので、副作用が少ない代替医療を取り入れる選択肢もあります。
《軟部肉腫で使われる抗がん剤》
放射線治療
補助的放射線療法・密封小線源療法
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