p53遺伝子発現異常はsm、mp大腸癌の予後因子となりうるか
近畿大学第一外科
吉田年宏、黒田幸作、綿谷正弘、家田真太郎、待寺則和、藤本喜代成、
中村正人、喜多岡雅典、肥田仁一、久保隆一、犬房春彦、進藤勝久、安富正幸
< 目的 >
p53遺伝子異常は、大腸癌の発生、進展に関与していると考えられている。
Kern(JAMA、1989年)やLauent −Puig(Gastroenterolog、1992年)は、サザンプロット解析より大腸癌における17pの欠失を検討し、予後との相関を報告した。当教室の検討によると17pの欠失とp53遺伝子産物の免疫染色の一致率は73%で、両者の間に有意な相関を認めている。今回我々はsm癌およびmp癌におけるp53遺伝子蛋白発現を免疫染色より解析し、他の臨床病理学的因子とともにこれらの大腸癌の予後との関連性を検討した。
< 対象、方法 >
1987年から1992年までに治癒切除されたsm癌21例、mp癌63例を対象とした。n因子別ではsm癌ではn(-)19例(90%)、n2(+)2例(10%)で、mp癌ではn(-)50例(79%)、nl(+)10例(16% )、n2(+)2例(3%)、n3(+)1例(2%)であった。84例の観察期間の中央値は34か月であった。p53免疫染色は、ホルマリン固定パラフィン包埋切片によりPAbl801抗体を用いてABC法で行った。
< 結果 >
p53免疫染色陽性はsm癌21例中の14例(679e)、mp癌63例中の42例(67%)に認められた。観察期間中にsm癌の再発例はなかったが、7例のmp癌(11%)に再発を認めた。p53染色別に再発を検討すると、p53陽性群42例中の5例(12%)に、p53陰性群21例中の2例(10%)に再発が認められた。n因子別に再発を検討すると、n(-)群50例中の2例(4%)、n1(+)群10例中の3例(30%)、n2(+)群2例中の1例(50%)と1例のn3(+)群(100%)が再発であった。
しかし、組織型別での検討では、再発との関連性は認められなかった。
(まとめ)
p53免疫染色率はsm癌、mp癌においてそれぞれ67%であった。
p53染色によるp53遺伝子蛋白過剰発現の検討は、sm癌、mp癌において予後因子としての有用性は低いと考えられる。