1月16日に兵庫医科大学の市民健康講座に参加して参りました。
口腔がんの診断と治療について兵庫医科大学歯科口腔外科の浦出雅裕先生のお話がありました。細胞に突然変異をおこすイニシエーターとがん化を助長するプロモーターの反復作用により、がん細胞が形成されます。潜伏期間は数年~数十年であるが大きくなりだすと速く直径1㎝のがんは10億個のがん細胞からなっています。タバコとアルコールは代表的なプロモーターです。
口のがんは、前がん病変といわれる白板症(がん化率5~10%)や紅板症(40%)から生じることが多く確認されています。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり悪性腫瘍(がん)にはがん腫と肉腫があります。肉腫は口腔がんの0.4%と発生率は低いが若年者にも発生し、増殖が速く早期に血行性全身転移を起こすことが多いのでむしろがん腫より予後が悪いとされています。口腔がんはがん全体の約2%位で90%は扁平上皮がんです。
口腔がんの種類は舌がん(50%)、歯肉がん(30%)、頬粘膜がんと口底がん(10%)その他(10%)に分類されます。口腔がんは種々のがんに比べて治りやすいがんに含まれ、積極的な治療を行えた場合の5年生存率は70%を超えています。しかし、口腔がんのある人の約9%に食道がんや胃がんの合併があります。
口腔がんの診断は、視診、触診、画像診断(パノラマX線、CT、MRI 、PET、超音波)血液検査、生検で検査が行われます。検査結果から細胞の悪性度を判定しTNM分類により進行度を決定し治療法が検討されます。
口腔がんの治療法は、外科療法、放射線療法、化学療法が基本で、単独あるいは併用で行われます。治療後の早期社会復帰が目標となり、がん切除後の即時再建や2次再建(皮膚、筋肉、骨の移植)の技術もかなり進んでいます。また、最近の治療法としてシスプラチンを使った超選択的動注化学療法(放射線併用)と強度変調放射線治療(IMRT)、粒子線治療なども有力な治療法として試されています。