大腸癌最新の診断・治療法

-大腸癌死亡ゼロは可能か-

2012年9月19日に兵庫医科大学市民健康講座に参加して参りました。今や国民病といわれる大腸がんにつて兵庫医科大学下部消化管外科の松原長秀先生のお話でした。

大腸がんの罹患率は男女共に第2位で年間4万人が死亡しています。しかし、大腸がんは治療すれば治る可能性の高いがんの一つです。昔は、抗がん剤の効かないがんと言われていましたが、近年著しく進歩しています。転移のある進行がんでも手術により完全に治せる可能性もあります。最初に手術で取れなくても抗がん剤や放射線治療を組み合わせることで取りきれる症例も増えています。

また、大腸がんの研究も進んでいます。大腸がんのなかにも色々異なった性格のがんがあります。右側と左側の大腸できたがんは違うことがわかってきました。抗がん剤の効きが違ったり、転移のしやすさが違うそうです。右側にできる大腸がんは転移しにくいこと、一番よく使う抗がん剤(5-FU)が効きにくいこと、K-RAS遺伝子に異常がある特徴があるそうです。

次に、リンチ症候群についてでした。

 

リンチ症候群の特徴

  • 子どもの2人に1人に受け継がれる。
  • 80歳までにおよそ8割に大腸がんができる。
  • 若い年齢で(平均42歳)大腸がんにかかる。
  • 大腸がんが右側大腸にできやすい。
  • 2つ以上の大腸がんができやすい。
  • 転移が少なく、長生きできることが多い。
  • 大腸がん以外に子宮体がん、胃がん、腎臓・尿管のがん、小腸がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がんなどができやすい。

リンチ症候群とは、家系内に大腸がん、子宮内膜がん(子宮体がん)を発症する方が多い特徴があります。他に小腸がん、腎盂がん、尿管がん、また日本人では胃がんも発症する方が多いとされています。リンチ症候群は、生まれながらに持っている遺伝子の変化(遺伝子変異)によって起こります。遺伝子は、私たちの体を構成する細胞の中にあり、体を作るための設計図のような役割をしています。

現在知られているリンチ症候群の原因遺伝子は、hMSH2、hMLH1、hMSH6、hPMS2の4つです。これら4つの遺伝子は、細胞分裂の際に起こり得るDNAの複製誤りを修復する働きをする物質をつくる情報です。リンチ症候群ではこの4つ遺伝子のどれかに変異が起こっているために、DNAの複製誤りが修復できず細胞のがん化を引き起こすと考えられます。ただし、この4つの遺伝子変異だけではリンチ症候群の原因を全て説明することはできません。いまだ研究途上の疾患であり、今後さらに別の原因遺伝子やメカニズムが判明する可能性がありますリンチ症候群の原因遺伝子の変異は、親から子に2分の1の確率で受け継がれます。

つまり、親が遺伝子変異を持っていても、必ず子どもに遺伝子変異が受け継がれるわけではなく、その確率は50%ということになります。また、これらの遺伝子変異を持っていても、必ずしもがんを発症するというわけではありません。

リンチ症候群や遺伝性大腸がんで気になる方は、兵庫医科大学に専門外来があるそうですので病院に確認して受診して下さい。

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