外見上にも大きな変化を及ぼす脱毛は、心理面にも影響を与える事も少なくありません。脱毛時に慌てないためにも、治療開始前にしっかりと理解して、事前準備をしておくことが大切です。
放射線治療による脱毛
放射線治療の場合、照射と同時に正常な細胞や毛根にダメージを与えるため、脱毛が引き起こります。
一般的には照射開始から2~3週間程で脱毛が始まり、治療終了後2~3ヵ月で毛が生え始めます。
※脱毛の程度や回復には個人差があります。
抗がん剤治療による脱毛
抗がん剤は、活発な細胞をめがけて攻撃するという特性を持っています。
毛を作る細胞(特に毛球部)は活発に増殖しているため、抗がん剤による影響を受けてしまい、脱毛を引き起こします。
脱毛と言うと髪の毛をイメージされることが多いですが、抗がん剤は全身療法であるため、眉毛やまつ毛など全ての体毛に影響を及ぼします。
脱毛の現れ方は、使用する抗がん剤の種類、投与量、投与スケジュールによっても異なります。
通常は抗がん剤投与開始後1~3週間程度で現れます。治療が終わると約1~2ヵ月で細胞が再生し始め、回復までには3~6ヵ月程かかります。
※脱毛の程度や回復には個人差があります。
抗がん剤の種類と脱毛の程度
脱毛の程度は、以下の様に“脱毛を生じやすい(高)”“時に脱毛を生じる(中)”“脱毛を生じにくい(低)”と、3段階に分けられます。
○脱毛を生じやすい(高) ※一般名[商品名]
ドキソルビシン[アドリアシン]・シクロホスファミド[エンドキサン]・イホスファミド[イホマイド]・エトポシド[ベプシド]・ドセタキセル[タキソール]・パクリタキセル[タキソール]
・イリノテカン[トポテシン/カンプト]
○時に脱毛を生じる(中) ※一般名[商品名]
ブレオマイシン[ブレオ]・ゲフィチニブ[イレッサ]・ゲムシタビン[ジェムザール]・ビンクリスチン[オンコビン]
○脱毛を生じにくい(低) ※一般名[商品名]
カルボプラチン[パラプラチン]・シスプラチン[ランダ]・メトトレキサート[メソトレキセート]・カペシタビン[ゼローダ]・フルオロウラシル[5-FU]・テガフールウラシル[UFT]
脱毛予防に期待される頭皮冷却
脱毛予防のための研究は昔から行われてきましたが、その中でも最も注目を集めているのが「頭皮冷却」という方法です。
これは、抗がん剤治療中に冷却キャップを被り、頭皮を冷やすことによって血流を減らして、抗がん剤が毛根細胞へ与えるダメージを少なくするというものです。
主に乳がん患者を対象に治験が行われ、設定温度やクーリング時間、化学療法レジメンなどの標準化が必要だが、脱毛予防において十分期待される方法だと発表されています。
しかし、日本においては、未だ保険適用外であり、実施可能施設も限られているという問題点もあります。興味のある方は、主治医などにご相談ください。
脱毛時の対処方法
<治療前にできること>
長いと抜けた時の量が多く感じてしまいます。比較的体調が安定している時に短くカットしておくことで、少しでも精神的なダメージを抑えられます。
<抜け毛への対策>
白い服は抜け毛が目立ってしまうので、黒や濃い色がお勧めです。
脱毛中であっても、頭皮を清潔に保つために毎日のヘアケアは重要となります。
泡立てたシャンプーで優しく洗い、流水でしっかりとすすいでください。
シャンプーはいつも通りの物でも構いませんが、気になる場合は赤ちゃん用など低刺激の物を選ぶと良いでしょう。
頭皮はとても敏感な状態になっているので、引っ掻いたりしないように爪を短くしておくこともポイントです。
<かつら選びのポイント>
かつらにもさまざまな種類があるので、それぞれの特性を理解し、“自分にとって使い勝手が良いかどうか”に最も重点を置いて選ぶことが大切です。
初めてのことで分からないことが多いと思いますので、看護師さんや経験者の方に話を聞いてみたり、手厚くサポートしてくれる販売店を選びましょう。
治療によるストレスを軽減するべく、脱毛予防の研究も日々行われています。
脱毛するといわれると辛い気持ちになりますが、髪は治療が終わった後にまた生えてきます。一時の事だと気持ちを切り替えて、まずは治療に専念できる環境を整えていきましょう!