癌の三大療法には、手術・抗癌剤・放射線治療があります。その中でも、癌治療の中心となり行われているのが抗癌剤治療です。
抗癌剤には様々な副作用があり、それが治療の妨げとなってしまいます。しかし、起こりうる副作用について知っておくことで、副作用が出た時にも落ち着いて対応することができます。また、事前に対策をとれるので、治療中の副作用の出方も変わってきます。
《 抗癌剤の副作用の種類 》
抗癌剤の副作用には、血液毒性と非血液毒性の2種類あります。
血液毒性とは、白血球(好中球)の減少・血小板減少・貧血といった血液に関係する副作用です。血液毒性は、骨髄(造血)障害で血液細胞が減少してしまうことによって起こります。
非血液毒性とは、血液毒性以外の副作用のことで、嘔気や嘔吐・脱毛・口内炎などが挙げられます。
今回は、血液に起こる副作用“骨髄抑制”について紹介します。
《 骨髄抑制(血液毒性)について 》
骨髄抑制の副作用が強く出てしまうと、治療の継続が難しくなってしまいます。また、この副作用が出てしまうことにより、貧血も出現します。血小板は出血を止め、赤血球は酸素を運び、白血球は外敵から体を守るといったそれぞれ大きな役割を果たしています。
骨髄抑制が起こると、細菌感染症のリスクが上昇します。また、大幅に減少してしまうことで、肺炎や敗血症といった重症感染症のリスクが大幅に高まってしまいます。
一般的に、抗癌剤投与7日目頃から1週間程度、軽度な骨髄抑制の副作用が発現します。
高齢者、全身状態低下、初回治療、臓器機能低下などの場合は、骨髄抑制の副作用が強く出る傾向にあります。
■血液検査で分かる血液の状態■
骨髄抑制に対する対策を事前に取ることは難しいですが、起こった場合は輸血や薬の投与を行い対応することができます。骨髄抑制の副作用については、血液検査でも分かります。
白血球(WBC) - 通常は6時間~1日で入れ替わります。
正常値は4.00~9.00×10³μlです。この数値が3.00以下になると抗癌剤治療の継続はできなくなります。さらに、2.00以下になることで抵抗力がなくなってしまうため、無菌室に入らなければならなくなります。
白血球減少時は、G-CSF(ノイトロジン・グラン)やジーラスタなどの投与を行い対策を取ります。
G-CSFは基本的に連日投与されます。使用方法としては、白血球が低下する前から投与する予防的投与と、白血球が低下してから投与する治療的投与があります。
ジーラスタは、2014年12月に販売となった長期作用のG-CSF製剤です。この薬は、主に予防的に使用されます。使用方法は、抗癌剤投与後に1回皮下注射を行います。
赤血球(RBU) - 通常は120日で入れ替わります。
正常値は男性が4.00~5.39×⁶μ、女性が3.60~4.89×⁶μです。赤血球が低下してしまった場合は、輸血を行います。
血小板(PLT) - 通常は10日で入れ替わります。
正常値は130~349×10³μlです。この数値が低くなってしまうと、血が止まらなくなってしまいます。10日経っても血小板の数値が戻らない場合は、輸血を行います。
骨髄抑制が起こった場合の対策
骨髄抑制の副作用が出る=カラダの免疫機能が落ちているという事であり、感染症にかかりやすくなっています。
重篤な感染症を予防するために、あらかじめ感染経路を遮断する対策を取っておく事も大切です。
- 食事や外出後、植物やペットに触れた後などは手指洗浄剤でしっかりと洗いましょう。
- 食事や薬の内服後、外出後などはうがい薬でうがいを行いましょう。口内炎などで口腔内がしみる場合は、生理食塩水でのうがいがおすすめです。
- 衣服は常に清潔なものを身に付け、入浴やシャワーも毎日行いましょう。
- 白血球が減少している時は、必ず加熱調理したものを食べるようにしましょう。また、調理後すぐに食べるようにしてください。
- 生活スペースは常に清潔な状態にしておきましょう。カーテンやエアコンの清掃も定期的に行うことが大切です。
- 外出時はマスクを着用し、人混みは避けるようにしましょう。
- 感染の兆候を知るため、毎日体温測定を行いましょう。
- 化学療法前には歯科を受診し、口腔内の治療を済ませておきましょう。
万が一、感染症が起こった場合は医師の指示通り、抗生物質や真菌剤、抗ウイルス剤を内服するようにしましょう。
化学療法中は必ずといって良いほど、骨髄抑制の副作用が出現します。骨髄抑制により、治療が計画通りに進まない時も出てきますが、決して焦ってはいけません。悩みや焦りといったストレスは、カラダの免疫機能を大きく下げてしまいます。
そんな時は、焦らずに「今は体力を回復させるための期間」だとプラスに考えながら、前向きに化学療法を受けていきましょう。