アミノ酸は、タンパク質を形成する最小の成分です。血液、内臓、筋肉だけでなく遺伝子情報であるDNAなど、体のあらゆる組織構成を担っています。
20種類存在するアミノ酸のうち、9種類の体内で合成することができないアミノ酸のことを必須アミノ酸と呼びます。必須アミノ酸は免疫を活発に動かすのに不可欠で、不足すると抵抗力が落ちてしまい、身体を弱らせてしまうことがあります。
必須アミノ酸は食物から摂取する必要があり、偏った食事をしてしまうと、体内のアミノ酸バランスが崩れてしまいます。特に治療中はバランスの良い食事を心がけ、アミノ酸バランスを崩さないように気を付けましょう。
必須アミノ酸は以下の9種類です。
■イソロイシン(I)
側鎖に枝分かれした分岐鎖を持つため、ロイシン・バリンとともに「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」と呼ばれています。イソロイシンは筋肉の強化や、疲労回復に効果があります。
機能 | 成長促進、疲労回復、血管拡張、肝機能強化、筋肉強化 |
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多く含む食品 | 鶏肉、鮭、牛乳、プロセスチーズなど |
■スレオニン(T)
スレオニンは必須アミノ酸の中で最後に発見されたアミノ酸です。動物性タンパク質に多く含まれており、成長促進効果や、肝臓の脂肪蓄積を抑制する効果があります。
機能 | 成長促進、新陳代謝の促進、肝機能のサポート |
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多く含む食品 | 鶏肉、さつまいも、卵など |
■トリプトファン(W)
エネルギーやビタミンの一種である「ナイアシン」の原料になります。また、ビタミンB6・ナイアシン・マグネシウムとともにセロトニンを生産します。精神を安定させ、鎮痛作用を持つ神経伝達物質の基となります。
機能 | 安眠効果、精神安定 |
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多く含む食品 | 牛乳、豆乳、ヨーグルト、プロセスチーズ、アーモンド、赤身魚など |
■バリン(V)
ロイシンやイソロイシンと同じ分岐鎖アミノ酸(BACC)の一種です。バリンは筋肉組織で代謝されます。筋肉の強化や、疲労回復に効果があります。また、血液の中にある窒素のバランスを調整する働きもあるアミノ酸です。
機能 | タンパク質の合成、肝機能の向上、血液中の窒素バランスの調整 |
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多く含む食品 | プロセスチーズ、レバー、鶏肉、牛肉、落花生、ゴマなど |
■ヒスチジン(H)
ヒスチジンは大人になると体内で合成できるようになりますが、子どもの間は合成できません。そのため、必須アミノ酸として分類されています。慢性関節炎の症状緩和、ストレスの軽減などの効果や神経機能補助を行います。
機能 | 神経機能のサポート、慢性関節炎の緩和、ストレス軽減 |
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多く含む食品 | 鶏肉、カツオ、マグロ、イワシ、チェダーチーズなど |
■フェニルアラニン(F)
フェニルアラニンは脳と神経で信号を伝達する神経伝達物質として働きます。人工甘味料アスパルテームの原料ともなっています。精神を高揚させ、血圧を上げる作用や、記憶力を高める効果などを持っています。しかし、フェニルアラニンには血圧を上昇させる作用があるため、過剰に摂取すると高血圧を招き、心臓病などのリスクを高める恐れがあります。
機能 | 精神安定、鎮痛効果 |
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多く含む食品 | 大豆製品、卵、チーズ、かぼちゃ、じゃがいも、肉類、魚介類 |
■メチオニン(M)
かゆみなどのアレルギー症状を引き起こすヒスタミンの血中濃度を下げる効果があります。メチオニンが不足すると利尿機能が低下し、むくみ、動脈硬化、抜け毛の原因となります。
機能 | アレルギーによるかゆみの軽減、肝機能のサポート、抑うつ効果 |
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多く含む食品 | 鶏肉、牛肉、マグロ、カツオ、牛乳、チーズ、豆腐など |
■リジン(K)
リジンは動物性タンパク質に多く含まれ、穀物などの植物性タンパク質にはあまり含まれません。その為、炭水化物中心の食生活をしていると不足しやすい栄養素です。ブドウ糖の代謝を良くして集中力を高めたり、カルシウムなどの吸収を促進するほか、肝臓機能の強化など、多くの効果が確認されています。
機能 | 肝臓機能強化、免疫力向上、カルシウムの吸収促進 |
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多く含む食品 | 鶏肉、牛乳、チーズなど |
■ロイシン(L)
バリンやイソロイシンと同じ分岐鎖アミノ酸(BACC)の一種です。多くの食品に含まれており、通常の食生活では不足することはほとんどありません。肝臓の機能を高めて筋肉を形成し、傷ついた筋肉を修復する働きを持ちます。
機能 | タンパク質の合成、肝機能向上、筋肉強化 |
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多く含む食品 | 牛肉、鯵、鮭、乳製品、大豆製品、ほうれん草など |
人間の体を構成しているタンパク質(脳・内臓・ホルモン・血液など)はいくつものアミノ酸が集まってできています。必須アミノ酸は食品から摂取する必要がありますが、バランスのとれた食生活をすることで不足する心配はほとんどありません。神経質になる必要はありませんが、健康な身体のためにアミノ酸が必要だということだけは覚えておきましょう。