ビタミンは、体の体調を整えるのに欠かすことのできない栄養素です。
ビタミンは全部で13種類あり、体内での働きはビタミンの種類によって異なります。必要量は少ないのですが、ビタミンは他の栄養素がうまく働くために機械の潤滑油のような役割を果たしています。多く摂り過ぎる必要はないですが、体の中でビタミンはほとんど作ることができないので、食べ物から摂ることが必要です。
ビタミンには、水に溶ける水溶性ビタミンと、油脂に溶ける脂溶性ビタミンがあります。
それぞれの性質から体への取り込まれ方や代謝に特徴があります。今回は、水溶性ビタミンについてご説明させていただきます。
水溶性ビタミンとは?
水溶性ビタミンは尿などから体の外へ排出されやすい特徴があるため、少量を頻回摂ることでビタミンの吸収性が良くなります。必要な量を毎日摂ることが大切です。水溶性ビタミンは水に溶けやすいという特徴があるので、摂取する前の調理方法は出来る限り手早く行うことが大切です。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質からのエネルギー産生と、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをします。糖質を栄養源として使っている脳神経系の正常な働きにも関係しています。ビタミンB1は通常の食生活において摂り過ぎによる過剰症の心配はほとんどありません。しかし、サプリメント等から1日10g程度を20日間にわたり大量摂取すると、頭痛・苛立ち・かゆみなどの皮膚症状が現れることが報告されています。
ビタミンB1を多く含む食品…豚肉、レバー、豆類など。特に豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれています。
ビタミンB2
ビタミンB2は、主に皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをするビタミンです。
糖質・脂質・たんぱく質を体内でエネルギーにするなどの代謝を支える重要な働きを担っています。ビタミンB2が不足すると発育や成長が阻害される他、口の端が切れる口角炎、口内炎、舌炎のように皮膚や粘膜に炎症が起こりやすくなります。水溶性のため、使われなかったビタミンB2は尿中に出てしまうことから、過剰症の報告はありません。
ビタミンB2を多く含む食品…レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品、葉菜類など。
ビタミンB6
ビタミンB6は、食品中のタンパク質からエネルギー生産したり、筋肉や血液などが体内で造られる時に働きます。このため、たんぱく質を多く摂る人ほどビタミンB6が多く必要です。また皮膚や粘膜の健康維持にも役立っています。ビタミンB6が不足すると、湿疹などの皮膚炎や口内炎、貧血、脳波の異常などが起こります。ビタミンB6は腸内細菌によってもつくられることから、基本的に不足することはないですが、抗生剤を長期間飲んでいる人は不足する場合があります。
ビタミンB6を多く含む食品…かつお、まぐろなどの魚類、肉類、バナナなど。
ビタミンB12
ビタミンB12は、水溶性ビタミンの一種である葉酸と協力して赤血球中のヘモグロビン生成を助けています。また、脳からの指令を伝える神経を正常に保つ役割もあります。ビタミンB12が不足すると、赤血球の減少、異常に巨大な赤血球ができてしまったりする”巨赤芽球貧血”という悪性の貧血がみられます。極端な変色でなければ、不足は起こりにくいですが、胃や腸を手術で切除した場合や、ビタミンB12の吸収に問題がある人、動物性食品をあまり食べない人、菜食主義の人は不足する可能性があるため注意が必要です。
ビタミンB12を多く含む食品…動物性食品(特に牡蠣などの魚介類やレバーなど)
ビタミンC
ビタミンCは、体の細胞と細胞の間を結ぶコラーゲンというたんぱく質をつくるのに不可欠です。ビタミンCは、病気など様々なストレスへの抵抗力を強めたり、鉄の吸収を良くしたりします。過剰摂取しても吸収率が低下し、残りは尿から出てしまうため、一般的には有害な過剰症はないといわれています。ただし、薬やサプリメントなどで多く摂取することにより、吐き気、下痢、腹痛といった胃腸への影響が報告されています。腎機能に問題がある人では腎結石のリスクが高まるので、注意が必要です。
ビタミンCを多く含む食品…果物、野菜など。ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いので、できるだけ生で食べるのが良いと言われています。
ナイアシン
ナイアシンは、糖質・脂質・たんぱく質から、細胞でエネルギーを産生する際に働く酵素を補助するのに不可欠な存在です。ナイアシンが不足すると、食欲がなくなり消化不良、皮膚の発疹が起こります。さらに不足すると、うろこ状に荒れる皮膚炎や痴ほう症、下痢などを起こすペラグラという欠乏症になります。通常の食事から過剰摂取につながることは、ほとんどありません。しかし、薬やサプリメントを誤って大量に摂取すると、消化不良やひどい下痢など消化器系や肝臓への障害などの過剰症が起こることがあるので、注意が必要です。
ナイアシンを多く含む食品…魚類、肉類(特にレバー)など。
パントテン酸
パントテン酸は、糖質・脂質・たんぱく質の代謝とエネルギー産生に不可欠な酵素を補助する役割をしています。また、コレステロール・ホルモン・免疫抗体などの合成にも関係しています。パントテン酸が不足すると、手足の知覚異常や頭痛、疲れなどが起こることが知られていますが、ほとんどの食品に含まれているので、通常の食生活で欠乏症はほとんど起きません。また、薬やサプリメントで大量に摂取する場合は、吐き気や食欲不振の報告があるので、過剰摂取も良くありません。
パントテン酸を多く含む食品…納豆、鮭やいわしなどの魚介類、肉類(特にレバー)、卵など。
葉酸
葉酸は、たんぱく質や細胞をつくる時に必要なDNAなどの核酸を合成する重要な役割を担っています。葉酸は、ビタミンB12と協力して血液をつくる働きがあるため、欠乏症ではビタミンB12不足の際と同様、巨赤芽球性貧血という悪性の貧血がみられます。さらに最近では、成人において脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を防ぐという研究結果が多数報告されています。葉酸は通常の食生活では欠乏の心配はほとんどありません。しかし、薬やサプリメントで耐容上限量を超えて摂取した場合、神経障害、発熱、蕁麻疹などの過剰症が起こるとの報告があります。
葉酸を多く含む食品…レバー、納豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーといった緑黄色野菜やイチゴなど。
ビオチン
ビオチンは、ビタミンB群の一種で以前はビタミンB7とも呼ばれていました。エネルギーの代謝を助け、皮膚や粘膜の健康維持に役立つなど、人間が健康に過ごすためには欠かせない栄養素です。ビオチンは肝臓、腎臓、筋肉、乳腺、消化管の順に多く存在し、アミノ酸や脂質の分解と代謝を助ける働きを担っています。不足すると、皮膚炎・結膜炎・湿疹・血糖値上昇・疲労・筋肉痛・食欲不振・吐き気・不眠・脱毛・神経障害など多数の症状が出てきます。
ビオチンを多く含む食品…レバー、魚介類、乳製品、大豆、ピーナッツ、卵、ほうれん草、カリフラワーなど。
水溶性ビタミンだけでも多くの種類が存在します。すべてを覚える必要はありませんが、人間にとって大切な役割を果たしてくれることには間違いありません。偏った食事ではなく、バランスのとれた食生活を心がけるようにしましょう。
次回は、脂溶性ビタミンについてご紹介いたします。